WordPress移管前に必ず読む
基礎知識・共通手順
どの移行パターンを選ぶ場合でも、必ず事前に理解しておくべき知識をまとめました。バックアップの取り方、DNSとドメインの仕組み、hostsファイルによるダウンタイムゼロの確認方法、SSL証明書の設定タイミングまで、移管を安全に進めるための全基礎知識を解説します。
📋 目次
このページで解説する内容
✅ 1. 作業開始前の確認チェックリスト
移管作業を始める前に、以下の項目を全て確認しましょう。準備不足のまま作業を始めると、取り返しのつかないトラブルにつながります。
-
旧サーバーの契約期限を確認した 移管中・移管後しばらくは旧サーバーが必要。更新タイミングと移管スケジュールを調整する。新サーバーは旧サーバーの更新日より1ヶ月以上前に契約するのが理想。
-
新サーバーを契約・初期セットアップ済みである ドメイン設定・データベース作成・FTPアカウント確認まで完了していること。
-
新サーバーのPHP・MySQLバージョンが互換性あり 旧サーバーと同等以上のバージョンが推奨。WordPress推奨はPHP 8.2以上、MySQL 8.0以上。
-
完全バックアップを取得した(複数箇所に保管) ファイル一式+データベースをセットで保管。ローカルPCとクラウドストレージの両方に保存。
-
ドメインのレジストラのログイン情報を確認した DNS切り替え時にネームサーバーを変更するために必要。お名前.com・ムームードメイン等のID/PW。
-
DNSのTTL値を事前に短縮した(推奨) 移管3〜7日前に300〜600秒(5〜10分)に設定しておくと、DNS切り替え後の伝播が速くなる。
-
移管作業の時間帯を決めた(深夜〜早朝推奨) アクセスが最も少ない時間帯(深夜1〜5時など)に実施することでユーザーへの影響を最小化。
-
関係者への事前告知・周知を行った 複数人で運営しているサイトはDNS切り替え前後24時間は更新作業を行わないよう周知する。
💾 2. 【最重要】バックアップの取り方
移管作業でバックアップを取らずに進めることは、安全ベルトなしで高速道路を走るようなものです。作業ミスやサーバー障害で元のサイトが破損した場合、バックアップがなければ復旧は不可能です。
✅ プラグインでバックアップ(初心者におすすめ)
技術的な知識がなくても簡単にバックアップが取れるプラグインを3つ紹介します。
All-in-One WP Migration
ファイル+データベースを一つの .wpress ファイルにまとめてエクスポート。インポートも同じプラグインで行える最もシンプルな方法。無料版は512MBまで。
UpdraftPlus
WordPress管理画面から操作でき、Google Drive・Dropbox等への自動バックアップも可能。容量制限なし(無料版)。移管前の一時的なバックアップにも最適。
Duplicator
サイトをインストーラー付きパッケージとして書き出す。新サーバーへアップロード後にブラウザから簡単インストールができるため、サイト移行ツールとしても優秀。
🔧 手動バックアップ(FTP+phpMyAdmin)
プラグインが使えない場合や、大容量サイトの場合は手動でバックアップを取ります。ファイルとデータベースの2種類を別々に取得する必要があります。
① WordPressファイルのバックアップ(FTP使用)
FTPソフトを準備する
FileZilla(無料)などのFTPソフトをPCにインストール。サーバーのFTP接続情報(ホスト・ユーザー名・パスワード・ポート)を管理画面で確認しておく。
WordPressフォルダを丸ごとダウンロード
WordPressがインストールされているディレクトリ(通常 public_html/ または www/)を丸ごとダウンロード。特に wp-content/(テーマ・プラグイン・メディア)と wp-config.php は必須。
大容量サイトは圧縮してからダウンロード
画像が多いサイトはFTP転送に数時間かかることがある。サーバーパネルのファイルマネージャーから zip 圧縮してダウンロードすると大幅に時間を短縮できる。
② データベースのバックアップ(phpMyAdmin使用)
phpMyAdminにログイン
旧サーバーの管理パネルからphpMyAdminを開く。WordPressが使用しているデータベースを左メニューから選択する。
「エクスポート」タブを開いて設定確認
以下の3項目にチェックが入っていることを確認する(デフォルトで入っていない場合がある):
✓ DROP TABLE コマンドを追加
✓ IF NOT EXISTS を追加
✓ AUTO_INCREMENT 値を追加
「実行」をクリックして .sql ファイルを保存
.sql ファイルとしてPCに保存する。ファイルサイズが大きい場合は gzip 圧縮形式(.sql.gz)でダウンロードしても問題ない。
📁 バックアップの保管場所
バックアップは必ず複数箇所に保管します。「PCだけに保存」は危険です。PCが故障・盗難にあったら復旧できなくなります。
① ローカルPC(すぐアクセスできる作業用)
② クラウドストレージ(Google Drive・Dropbox・OneDriveなど)
③ 外付けHDD/USBメモリ(さらに安心したい場合)
🌐 3. DNSとドメインの仕組みを理解する
WordPress移管でもっとも多くの人が戸惑うのが「DNS切り替え」です。仕組みを理解しておくと、移管中のトラブルに慌てなくなります。
ドメイン・DNS・サーバー・IPアドレスの関係
ブラウザにURLを入力してからページが表示されるまでの流れ
example.com を入力
example.comのIPは?
IPアドレスを返す
そのIPへ接続して
ページを取得
移管では「ネームサーバー」の向き先を旧サーバーから新サーバーに変更します
サーバー移管における「DNS切り替え」とは、ドメインのネームサーバー設定を変更して「このドメインはどのサーバーのIPアドレスを見ろ」という指示を新サーバーに向け直す作業です。ファイルやデータベースの移行が完了した後に、最後の仕上げとして行います。
TTL(Time To Live)を事前に短縮する
TTLとは「DNSキャッシュの有効期間(秒)」のことです。通常3600秒(1時間)〜86400秒(24時間)に設定されています。移管前にこれを短縮しておくと、DNS切り替え後の伝播が速くなります。
| タイミング | 推奨TTL値 | 理由 |
|---|---|---|
| 移管3〜7日前 | 300〜600秒(5〜10分) | 切り替え後の伝播を速くするため事前に短縮 |
| DNS切り替え直後 | そのまま(300〜600秒) | 問題があっても素早く元に戻せる |
| 移管完了・安定稼働後 | 3600秒(1時間)に戻す | 不要な短縮はDNSサーバーの負荷になるため |
🖥️ 4. hostsファイルで事前確認する方法
hostsファイルとは、OSが持つ「ドメイン→IPアドレス」の変換テーブルです。ここに特定のドメインのIPアドレスを書き込むと、DNSサーバーを参照せずにそのIPアドレスに直接アクセスできます。
移管での活用法:DNS切り替え前に、自分のPCだけ新サーバーのIPアドレスを参照するよう設定することで、一般ユーザーが旧サーバーを見ている間に新サーバーの動作確認を安全に行えます。
- 新サーバーでサイトが正しく表示されるか(デザイン崩れがないか)
- 管理画面(/wp-admin/)にログインできるか
- 画像・CSS・JavaScriptが正常に動作しているか
- お問い合わせフォームなどが正常に動作するか
- SSL(https://)で正しくアクセスできるか・鍵マークが表示されるか
- 主要ページ・記事・固定ページが正しく表示されるか
nslookup ドメイン名 と入力すると現在向いているサーバーのIPが表示されます。
Windows でのhostsファイル編集手順
メモ帳を「管理者として実行」で開く
スタートメニューで「メモ帳」を右クリック →「管理者として実行」。通常の起動では保存権限がなく失敗します。
hostsファイルを開く
「ファイル → 開く」で以下のパスを直接入力して開く(ファイルの種類を「すべてのファイル」にすること):
C:\Windows\System32\drivers\etc\hosts
ファイルの末尾に追記して保存
以下の形式で新サーバーのIPアドレスとドメインを追記し、上書き保存する:
# WordPress移管 事前確認用(確認後は必ず削除する)
203.0.113.1 example.com
203.0.113.1 www.example.com
ブラウザのキャッシュをクリアしてからアクセス
ブラウザのキャッシュが残っていると正しく反映されない場合がある。Ctrl+Shift+Delete でキャッシュをクリアしてからアクセスする。
【必須】確認後は追記した行を削除する
DNS切り替え後も放置するとIPアドレスが変わったときにアクセスできなくなります。確認が終わったら必ず追記した2行を削除して保存してください。
Mac / Linux でのhostsファイル編集手順
ターミナルを開く
Finder → アプリケーション → ユーティリティ → ターミナル(またはSpotlightで「ターミナル」と検索)。
nanoエディタでhostsファイルを開く
以下のコマンドを入力してhostsファイルを開く(管理者パスワードを求められる):
sudo nano /etc/hosts
末尾に追記して保存・終了
ファイル末尾に以下を追記。Ctrl+O で保存(Enterで確定)、Ctrl+X で終了:
# WordPress移管 事前確認用
203.0.113.1 example.com
203.0.113.1 www.example.com
DNSキャッシュをクリアする(macOS)
macOSはDNSキャッシュを持っているため、以下のコマンドでリセットしてから確認する:
sudo dscacheutil -flushcache; sudo killall -HUP mDNSResponder
⏱️ 5. ダウンタイムをゼロにする考え方
適切な手順を踏めば、WordPress移管中のダウンタイム(サイトにアクセスできない時間)はほぼゼロにできます。以下の3つのポイントを守ることが重要です。
DNS切り替え前に新サーバーを完成させる
hostsファイルで動作確認し、新サーバーが問題なく動作している状態を確認してからDNSを切り替えます。旧サーバーは切り替え中も稼働し続けるため、ユーザーはどちらかのサーバーへ常にアクセスできます。
DNS伝播中は旧サーバーをそのまま維持する
DNS伝播の間、一部のユーザーは旧サーバー、一部は新サーバーを参照します。両方のサーバーが正常に動作していれば、どちらを参照しているユーザーも正常なサイトを閲覧できます。絶対に伝播完了前に旧サーバーを落とさないこと。
DNS切り替え中は更新作業を停止する
伝播中に旧サーバーで記事を更新すると、新サーバーに反映されません。DNS切り替えの前後24時間は、記事の投稿・更新・会員登録・ECの注文など、データを変更する操作を一時停止することを関係者全員に周知してください。
🔒 6. SSL証明書の設定タイミング
SSL証明書の設定タイミングを誤ると、DNS切り替え後にhttpでしかアクセスできない状態になり、ブラウザに「保護されていない接続」と表示されてしまいます。正しいタイミングを理解しておきましょう。
推奨する手順
新サーバーで無料SSL(Let's Encrypt)を発行する
多くのレンタルサーバーはサーバーパネルからワンクリックで無料SSL証明書を発行できます。エックスサーバー・ConoHa WING・ロリポップ等はすべて対応。ドメインをサーバーに追加した後に発行手続きを行う。
hostsファイル確認時にhttpsでアクセスできるか確認
hostsファイルで新サーバーを参照している状態で https://example.com にアクセスし、鍵マーク(🔒)が表示されることを確認する。
WordPressのURL設定をhttpsに統一する
WordPress管理画面 → 設定 → 一般 で「WordPressアドレス(URL)」と「サイトアドレス(URL)」が両方とも https:// から始まっているか確認する。
🔄 7. データベース内URLの一括置換
WordPressのデータベースには旧サーバーのURLやドメインが大量に記録されています。ドメイン変更やローカル→本番移行の場合は、これを一括で新URLに置換しなければ、画像の表示崩れや内部リンクの切れが発生します。
URL置換が必要な主なケース
- ドメインを変更した(例:old-site.com → new-site.com)
- ローカル環境から本番環境に移行した(localhost → example.com)
- httpからhttpsに変更した(http://example.com → https://example.com)
- サブディレクトリ構成を変更した(/blog/ を削除するなど)
推奨ツール①:Better Search Replace プラグイン
プラグインをインストール・有効化
WordPress管理画面 → プラグイン → 新規追加 で「Better Search Replace」を検索してインストール・有効化する。
テスト実行で影響件数を確認する
ツール → Better Search Replace で、「検索」に旧URL、「置換」に新URLを入力。まず「ドライラン(テスト実行)」にチェックを入れて影響を受けるレコード数を確認する。
テーブルを全選択して本番実行
テーブルリストで全テーブルを選択し、「ドライラン」のチェックを外して「値を置換」をクリックして実行する。
推奨ツール②:WP-CLI(上級者向け)
サーバーでWP-CLIが使える場合は、コマンド一発でシリアライズデータも含めて安全に置換できます。
wp search-replace 'https://old-site.com' 'https://new-site.com' --all-tables
⚙️ 8. PHP・MySQLバージョンの確認
移行先サーバーのPHPバージョンが旧サーバーと大きく異なる場合、WordPressやプラグインが正常に動作しない場合があります。移管前に必ず確認しましょう。
WordPress推奨の動作環境(2026年現在)
| 項目 | 最低要件 | 推奨バージョン | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| PHP | 7.4以上 | 8.2〜8.3 | 管理画面 → ツール → サイトヘルス |
| MySQL | 5.7以上 | 8.0以上 | 同上 |
| MariaDB | 10.4以上 | 10.6以上 | 同上 |
| HTTPS | 必須 | TLS 1.2以上 | httpsでアクセスできるか確認 |
🔧 9. 移管ツール・プラグインの選び方
WordPress移管に使えるツールは複数あります。サイトの規模・技術レベル・移管パターンによって最適なツールが変わります。詳細な比較は移管ツール・プラグイン比較ページで解説していますが、ここでは選び方の目安を紹介します。
初心者・小〜中規模サイト
All-in-One WP Migration が最も簡単。GUIで操作でき、エクスポート→インポートの2ステップで完結。無料版は512MB制限があるため、超える場合は有料版か他のツールを選択。
中〜大規模サイト
Duplicator Pro または 手動移行(FTP+phpMyAdmin) が適切。大容量ファイルも扱えて、移行後のURL一括置換機能も充実している。
エンジニア・上級者
WP-CLI を使った移行が最も柔軟で高速。コマンドラインでDB操作・URL置換・インポートをスクリプト化でき、大規模サイトや複数サイトの一括移行に最適。
各ツールの詳細な使い方・比較表は 移管ツール・プラグイン比較ページ をご参照ください。
❓ 10. よくある質問(FAQ)
Q. DNS伝播にはどのくらい時間がかかりますか?
TTLを事前に300〜600秒に短縮していれば、多くの場合は数十分〜数時間で完了します。短縮していない場合は最大72時間かかることがあります。「自分のPCで新サーバーが見えた」からといって世界中で完全に伝播しているわけではありません。
Q. 移管中に旧サーバーで記事を更新しても大丈夫ですか?
DNS切り替えの前後24時間は、旧サーバーでの更新を控えることを強く推奨します。更新した内容が新サーバーには反映されないため、データの不整合が発生します。どうしても更新が必要な場合は、新サーバーでも同じ内容を手動で更新してください。
Q. 旧サーバーはいつ解約すればいいですか?
新サーバーへの完全切り替えを確認してから、最低でも1〜2週間は旧サーバーを維持することを推奨します。問題が発見された場合に旧サーバーのデータを参照・復元できるためです。確実に安定稼働を確認してから解約しましょう。
Q. バックアップは移管後も保管すべきですか?
はい。移管前に取得したバックアップは移管完了後も最低3ヶ月程度は保管しておくことを推奨します。「移管後に以前のデータが必要になった」というケースは珍しくありません。
Q. サーバーを変えるとSEOに影響しますか?
同じドメインのまま移管する場合(URLが変わらない場合)は、基本的にSEOへの影響はほとんどありません。むしろ移管後に表示速度が改善されれば、SEOにプラスになる場合もあります。ドメイン変更を伴う場合の詳細は ドメイン変更を伴う移管ページ をご覧ください。
Q. WordPressのバージョンはそのまま移行できますか?
はい。バックアップしたファイルにはWordPressのコアファイルも含まれているため、同じバージョンがそのまま移行されます。移行後に管理画面から最新バージョンへのアップデートを行うことを推奨します。